
医理工レギュラトリーサイエンス学環
学環長 大野 達也
医理工レギュラトリーサイエンス学環は、医科学と理工学を基盤とし、分野の枠を越えて社会課題の解決に貢献できる高度人材の育成を目指して、令和6年度に設置されました。令和8年度には博士後期課程を新たに開設しました。これにより、本学環は博士前期課程から博士後期課程までを通じた一貫した大学院教育研究体制のもと、新たな段階へと歩みを進めています。
群馬大学は、附属病院に重粒子線治療施設を有し、重粒子線医学の診療・教育・研究において特色ある実績を重ねてきました。本学環では、この群馬大学の強みである重粒子線医学・医理工学を重要な教育研究基盤の一つとしながら、医学物理学、放射線生物学、医科学、理工学などの知を横断的に学ぶ教育研究を展開しています。一方で、本学環が重視するレギュラトリーサイエンスの考え方は、重粒子線医学に限られるものではありません。科学技術の成果を人と社会に役立てるために、根拠に基づいて評価し、必要性、安全性、倫理性、経済性、社会的影響などを総合的に判断するという視点は、医療分野のみならず、工学、情報、材料、エネルギー、環境、宇宙、産業技術など、幅広い分野において重要性を増しています。
科学技術が急速に進展する現代社会では、新しい医療技術や医療機器、AI・データサイエンス、量子技術、放射線・加速器技術、ロボティクス、材料技術、エネルギー関連技術などを、研究成果として生み出すだけでなく、人と社会に真に役立つ形で実装していくことが求められています。そのためには、個別の専門知識に加えて、技術が社会にもたらす価値やリスクを多面的に捉え、最も望ましい形へと調整していく力が不可欠です。レギュラトリーサイエンスは、まさに科学技術と社会をつなぐための学問であり、本学環の教育研究の中核に位置付けられています。
本学環の学生は、従来の専門分野の枠にとどまらず、医科学から理工学に至る幅広い知識を結び付け、複雑な課題を俯瞰的に捉え、解決へ導く力を養います。重粒子線医学を含む先端医療分野での学びを出発点としつつも、その過程で身に付ける科学的評価、技術の社会実装、安全性の検証、倫理的判断、リスクコミュニケーションなどの力は、生命医科学分野だけでなく、産業界、研究開発、行政、規制・標準化、宇宙・エネルギー・情報技術などの幅広い分野で活かすことができます。
令和8年度に開設した博士後期課程では、博士前期課程で培った基礎的・専門的な力をさらに発展させ、独創的かつ創造的な研究に挑戦できる環境を整えています。重粒子線治療をはじめとする先端医療、新しい医療技術・医療機器の開発、放射線防護、革新的加速器技術、宇宙放射線研究に加え、理工学を基盤とする多様な先端技術の社会実装において、高度な専門性と国際的な視野を備えた博士人材の育成を進めてまいります。
本学環が大切にしているのは、一つの専門分野に閉じるのではなく、異なる分野の知識や技術を結び付け、新たな価値を創り出す力です。医科学と理工学の分野横断は、未来の医療にとどまらず、産業、エネルギー、環境、情報、宇宙など、社会のさまざまな領域の発展に不可欠です。群馬大学がこれまで培ってきた重粒子線医学研究、医学系研究科及び理工学府の教育研究資源を最大限に活かし、地域社会から国際社会まで幅広く貢献できる人材を育成していくことが、私たちの使命です。